みーつけた
のことは大好きだったから今でもよく覚えている。
桜木軍団が連れてきたは、間違いなく“あの”だ、と感じた。
自分で言うのも自意識過剰のきらいがあるが、私は直感に優れている方であると自負している。さっきから続いている桜木軍団と彼女の話のやりとりを聞いているうちに薄々感じていたものが確証に変わっていく。
ずっと昔に願って結局叶わなかった夢が思わぬ所で思わぬ形で叶う事になった私は途端に自分で分かるほどに上機嫌になり、部員のアップ中はそれを手伝いながらもちらり、ちらりとの姿を眺めていた。
昔から変わっていない白い肌…、というよりは青白に近い不健康そうな肌色をしていた。
三つ子の魂百までとは言ったもので、昔からのインドア派は大人になっても変わることがないらしい。昔こそ私があちこち外に連れ出し半強制的にアウトドアをさせていた。
あの子は友達とかきちんと作っているのかしら?と、昔からの性格を知る私としては少々不安にもなってくる。
全体的に色の薄い子で何より特徴的な大きな目が強く印象付く子で、お母さんが「可愛い子よねえ」とぽつりと言ったのが一番最初だった。
彼女は私は幼稚園くらいから小学校1年の終わり頃まで近所に住んでいた子で、少しだけ引っ込み思案で素直なクセして、勝気で負けず嫌いで、すぐ口車に乗ってきて、何より部屋遊びが大好きな子だった。
皆が通っている幼稚園にも保育所にも通わずにちょっと遠くの幼稚園に通っていたみたいで、たまたま公園でひとり遊びをしていたを見つけて声をかけたのがきっかけで遊ぶようになった。あの子を知っているのは私だけだとちょっとした優越感に浸っていた。
(まさかあの子と同じ学校に通う事になるなんてね)
幼稚園は人数の関係で違う所に通っているけども、小学校は同じ校区の小学校に行く予定だと母親から教えられて私は彼女が1年生になるのを今か今かと待ち侘びて居たのだが結局、が小学校に上がる前の夏休みに引越ししてしまった。
その日の夜、親から「ちゃんところは海の向こうに行っちゃったの」と言われた時には「もう二度と逢えないんだ」と思わず泣いたのだ。
そして今でもたまに思い出すのは彼女の存在だった。
どうしているんだろう、もう一度会いたい。同じ学校に行きたいと願ったほどの、強い思い入れがあった彼女が今ここに居る。彼女は私の事を覚えてるだろうか。もしかしたら忘れてるかも知れない。
しかし、随分と日陰で育ったのか、小柄で華奢に育ったものだわと本当に思う。多少言葉に毒や棘が多くなってはいるけど、この際「あばたもえくぼ」と目を瞑って置こう。
それでもいい。
そうだとすれば、また私から話しかければいいだけなんだから。
「すっごい嬉しそうな顔しちゃってどうしたんですか、彩子さん?」
晴子ちゃんが上機嫌な私に気づいて質問をしてくる。
「すっごい嬉しいことがあったのよ。子供の頃に願った夢が叶ったみたい」
そう言っている間に顔をひきしめようとしてもうまくはいかないみたいで気が付けばまた笑っている私を見て晴子ちゃんが言った。
「満面の笑みですね」、と。