流川楓

2008/10/10

短編。世はこともなし。神はいませりと対になる作品です。

All's right with the world...?

談笑しながらお昼を食べている私たちのもとへツカツカとルカワくんが昼食中の私たちの前にやってきて睨みつけるように一瞥する。

クラス中が異様な雰囲気に包まれる。私たちのところからルカワくんは動く気もなく、座って言葉を失っている私たちを見下していた。
友達は泣いていいのやらどうしていいのやら硬直したままで、私は緊張のあまり紅茶を吸いながらルカワくんのほうを見上げるしかなかった。というかルカワくんは昼練に消えているもだと思っていたのでここに居るほうがどこか不思議で私はぼんやりと見上げていた。

「騒がしくてごめんね。でも静かに寝たいなら他の場所を探したほうが賢明だよ」
ルカワくんがどんな形であれ特定の女子生徒に係わり合いを持ったとなれば、親衛隊と名乗る子達からの印象は最悪だろう。取り敢えず険悪な雰囲気に流れるのは間違いない事実であるし、そうなるのならこれ以上の悪評はないだろうなあ、と開き直って私は言いたい事を言っておいた。
私の言葉に一緒にお昼を食べていた子たちは硬直してしまったらしく、私の体を揺らして必死になだめに走っている。


「何?」 ルカワくんが私の名前を呼ぶので、返事をする。少しだけルカワくんの表情が固くなっているのは気のせいだろうか。
「好きなのか」
突拍子の無い言葉に私は思わず「何が?」と返事してしまう。ルカワくんはむっとした表情で私の腕を掴んで立ち上がらせた。飲み終わった紅茶のパックが床に落ちたのでそれを拾い上げようとしても「そんなモン後でいい」とそれを許さない力で引っ張りあげられた。
そして一方的に「好きなのか」と質問を改めて繰り返してくる。

はあ?と固まる私たちを無視してルカワくんは一方的に話を続ける。
はいつもオレなんて見てもないのに、オレのことが好きだってさっき言った」
ああ、方便の事か。ダシに使われたルカワくんとしては私が彼のことが好きだろうとしても、存在を利用したとしても、いずれにしろ迷惑千万な話だったのだろう。と私は効率的な、ルカワくん、椅子に座ったままの友人たち両方が納得する謝罪を考えていると、ルカワくんがトンデモない事を言い出した。

が好きだ」

クラス中がしんと静まった。神は天にいまし、全て世はこともなしとかと言ったのは誰でしょう。私の小さな世界は突如として天下騒乱に包まれた。
厄介事という火の粉がわが身に降りかかる、と直感が私の感覚を支配した瞬間、沸騰するような動悸が体中に走った。