○○様気質
「なあ、。お前マネージャーする気無いか?」
入学してすぐ隣の席になった見目麗しい男子生徒がしきりにバスケ部のマネージャーをやらないかと勧誘を重ねてくる。
「あるわけないでしょう」
私の言葉に「何でだよー。面白いんだぜ、男バス。折角誘ってんだから入れよなー」とさっきから傍若無人な事を言っている。
どうしよう、相容れない。
「どうしてこの私が他人の世話を焼かなきゃなんないの? 私、お姫様気質だから無理」
マイペースを出来るだけ傲慢に言っては見たものの、私が自称お姫様気質としたら、彼は無自覚の女王様気質だ。
私の反論に彼は怒るわけではない。しかし本気で私が断っている事はあくまで単語の羅列みたいに扱って、私が即答で断るという事をまるで範疇を超えているという表情で質問をしてくるからこの女王様気質の男子生徒はタチが悪い。
「あのさ、取り敢えず聞くけどさ。ってオレの名前まだ覚えてないだろ?」
「覚えてるよ。藤真くんでしょ?」
さすがに隣の席になって口やかましかったら否応なしに名前くらい覚えるわ、と反論すれば「覚えてくれてよかった。お前さ、興味無い事は名前すら覚えない性格だろ」と決め付けられるように持論を叩きつけられた。
指摘されて本当のことだから1割増で腹が立つ。
「さっきも言ったけど、他人の世話を焼くの、嫌いだし面倒じゃないの。やらないわ」
私の言葉をやっぱりこの女王様は聞き流している。
「この書類に名前書くだけじゃねーか。いいからやれって。部活に打ち込んでこそ青春ってもんだろ?」
何を言っても無駄なところまで行ってしまっている。
もう嫌だこの人。
「もういいよ…」
あなたと話をしていると疲れが溜まるし、部活はするつもりないから他を当たってくれないかしら。
「そうか、観念したか。取り敢えず代わりに名前書いて出しとくな」
満面の笑みで私の「もういいよ」という言葉をものすごく拡大解釈したらしい藤真君が私の名前を油性ペンで書き始めた。
「ちょっと待ちなさいよ! もういい、ってあなたと話すつもりがないという意思表示よ!」
「もう遅っせーよ。ダラダラ話しているが悪い」
もう一体誰よ! こんなヤツを私の隣に置いたのは!