無策と秘策(秘策)
と俺をつなぐものがどこにもなかったら必死で探して、やっとひとつのものを見つけたのがボードゲームやカードゲームの類だった。今日はオセロをやってるのか、といつも
の一挙一動を確認してから「今日はオセロか」と
に声をかける。
学校の女子の大半は俺を見れば「キャー」と小うるさい反応だけど
だけはいつも「ギャー」とまるで化け物扱いをするから面白くて仕方ない。
の友人を人身御供に出すように前に出して、オセロに戻るのだ。
「藤真くんも大変だね。ところで部活は?」
俺の気持ちに気づいているのか、同情するような声をかけてくる。
「今日はバレー部が全面使用で休み。こっちのは最初っから長期戦は覚悟してるから今更だけどな」
オセロの対局を眺めながら返事をすれば、
の友人は俺の回答に満足したのか、「それでこそ藤真くん」と軽快に笑っていた。
「やっぱちゃんは強いや」
と対局していたもうひとりの
の友人が背伸びをしながら呟いた。
の圧勝で盤上には白が大量にちりばめられていた。
も満面の笑みでオセロの駒を数えていた。
俺は空いている席から椅子を運んで「次、俺と対局。な!」と言えば、
が「えー」と不満そうな表情で俺を上目で睨みつける。心底乗り気でない
をその気にさせる方法は既に俺の手の内にある。バカにしたような笑みを浮かべながら、挑発してやればすぐに乗ってくる。
それともちゃんは井の中の蛙だから負けるのが怖いとか?
この一言が全てであり、の闘志に火がともる。
「受ける。私が勝てばマック以外で何か奢って貰うわ」
さっき話をしていた
の友人が笑って俺の顔を見る。もう一人の友人が「あーあ、言っちゃったぁ」と俺と
を交互に見て困ったように笑っていた。
はまっすぐにただ俺だけを見て「2本先取ルール」と俺にルールの確認を求めてきた。
1戦目は普通に戦って
が勝ち、2戦目は俺が取る。あの悔しそうな顔すらも俺に向けられているから嬉しさのあまり笑えば、たちまち怒りを滲ませた表情を
は浮かべる。
変わる表情を眺めながら、3戦目の事を考えていると、
の友人たちが気を遣ったのだろう「帰る」と言って俺に帰り支度を始めた。
「のことよろしくね」
「明日はお菓子の差し入れがあると嬉しいな」
二人とも既に知っているらしく、俺は苦笑いを浮かべて「仰せのままに」と返事をすれば、満足したのかそのまま教室を出て行った。その間
はじっと盤面を真剣に見つめながら帰る友人に手を振っていた。
そして第三戦目が始まった。俺も
と同じ様に真剣に盤面の駒を追いかける。
僅差で負ける一手を探るために。