仙道彰

2008/11/15

短編

女の子談義

「あ、あのコあのコ、カッワイイなあ」
「どれどれ?」
仙道の女好きは今に始まった事でもないらしく、クラスメイト2年目となった今では、該当の女の子を一緒に眺めるのが日常に成り下がっていた。
今日見つけたのは中庭でお弁当を食べている1年生集団の中で静かにニコニコとしたツインテールの小さな女の子だった。

うん、あのコは問答無用にカワイイわ。

私もお弁当の唐揚げをお箸で摘みあげながら「お人形さんみたいねー」と呟くと、仙道も満足したらしく、「でしょー」とのんきに相槌を打っていた。

仙道の女の子をみる目というのはすさまじいまでのセンサーだと思う。男ウケでも女ウケでもない、誰がみても「かわいい」という万人受けする子を目ざとく見つけるからある意味尊敬する。別のことに使えばいいのに、と思うときも多々あるのはさておき…。

「女の子ってみーんな菓子みたいだから好きなんだよねー」
あ、それちょうだい、と私のお弁当からチーズとほうれん草の卵焼きを一方的に仙道が取り上げて口に運ぶ。
「へー。じゃあさ、たとえばさっきの子は?」
また何をバカな事を言いだすのだろうか、と一方的に取り上げられたおかずの事を叱責するのも忘れて私は窓からお箸で中庭にいる女の子たちを指して仙道に尋ねた。

「んー、さっきの子はマカロンかブッセかなあ、こっちの子はラング・ド・シャクッキー。あっちの子はオレンジピールかなー」
ああ、なるほどー。と私は納得しながら三人の女の子の方を見てうんうん頷いた。それに満足したかのように仙道も頷いていた。

「で、さんは、干菓子」
にこにこと悪びれなく仙道が言い、私は思いっきり怪訝な表情を浮かべる。
「まさか私が仙道お菓子コレクションに分類される側の人間だと思った事もなかったわ…」
何をどう言ったらいいのか分からず、思いのたけで一番伝えたい事だけを言うと仙道は一瞬考えてから大声で笑い始めた。

さんだって女の子でしょ」
「まあ、そうだけど…」
生物学的分類をされるとそれ以上でもそれ以下でもない私は返答に詰まり、それ以上何を言う事もなく、ぼんやりと中庭の女の子たちを眺めていた。

「やっぱりさんは干菓子。細かく言えば落雁か和三盆」
「意味が分からない」
「和菓子の良さは年を取るにつれて分かる人が多くなるって事だよ。俺は和菓子は昔から結構好きだけど」
それって何だ。いい意味なのだろうか、それとも悪い意味なのだろうか。仙道の追い討ちをかけるような言葉に何を私は言う気もなくして静かに溜息を吐いたのだった。